▼ウパ江、仲良くなった青年が亡くなり

「ウパ江君。あのね」
「…………」
「うん。わしの言葉を聞いてくれるなら、聞いてくれ。君が、涙を流せるようにしてしまったのは、わしなんじゃよ」
 ウパ江は涙をこぼしながら、それを聞く。
 何故、とは思わない。
 そういう親だと、そう思う。
「済まない。本当に、それが正しかったのか、今、迷っているよ。君は、純粋に機械で在れた。涙を流す機能は必要かなったんじゃ、なかろうかと……」
 言う、トロイに。
「ぐずっ。ほんとですよ……。ほんとですよ。んもう……んもう……」
 ボロボロと、泣く。
 心の限り。泣く。
 泣いて。彼女の慟哭が響く。
 そして落ち着き。
「……また、泣くかもしれません」
「すまんの」
「……ですが、博士。お願いがあります」
 ん。と喉で返事をして、トロイは頷く。
「何じゃね。……嘆くのは、苦しいかね」
 ウパ江は、はい、と一言。しかし、でも、と続けて。
「絶対に。絶対に、私が泣くことを、取り上げないでください。彼の死を。彼の死に。私は涙をしました。きっとまた泣くことを、どうか――」
 どうか――。
 懇願するように。
 心の底から。
 非力な者が、命乞いをするかのように。
「取り上げないでください……ッ」
 泣き崩れる。
 それを見て。ああ。とトロイは頷いた。
 それは柔らかい笑顔で。
「そんなことはせんよ。……人の嘆きを失くしたい。そうは思うが、嘆かない人間を作りたいなど、思っておらん」
 深く、呑み込むように。ウパ江はその言葉をゆっくりと自分の中へと納め。
「……はい」
 頑張って、笑顔を作った。